「野島 稔・よこすかピアノコンクール」にゆかりのあるピアニストたちが2回にわたりお贈りする一期一会のコンサート
横須賀に生まれ、日本を代表する国際的ピアニストとして活躍した故・野島 稔氏(1945 -2022)。
その唯一無二の美しい音色や研ぎ澄まされた技巧、磨きぬかれた深い音楽性により”ピアノ芸術の真髄を伝える貴重な演奏家”と評されました。
横須賀芸術劇場では1994年の開館以来、リサイタルや協奏曲でたびたび出演。2006年からは自身の名を冠した「野島 稔・よこすかピアノコンクール」の審査委員長として、次世代の優秀なピアニストの発掘と育成にもご尽力いただきました。
野島氏に想いを馳せて、ゆかりのピアニスト達が協演する特別な2日間となります。
第1回 ピアノ協奏曲
2024年5月3日(金・祝)15:00開演(14:15開場)
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指 揮 高関 健
管弦楽 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 -
野上真梨子 (第5回コンクール 第1位)
モーツァルト
ピアノ協奏曲 第27番 変ロ長調 K.595 -
小井土文哉 (第6回コンクール 入選)
ラフマニノフ
ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 Op.18 -
若林 顕 (第3回~第6回コンクール 審査委員)
プロコフィエフ
ピアノ協奏曲 第2番 ト短調 Op.16 -
伊藤 恵 (第8回~第9回コンクール 審査委員)
ベートーヴェン
ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 Op.73 「皇帝」
出演者/プロフィール
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高関 健
Ken Takaseki
©K.Miura -
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
Tokyo City Philharmonic Orchestra
©K.Miura -
野上真梨子
Mariko Nogami
©Shigeto Imura -
小井土文哉
Fumiya Koido
©Kei Uesugi -
若林 顕
Akira Wakabayashi
©Burkhard Scheibe -
伊藤 恵
Kei Itoh
©武藤 章
野上真梨子 Mariko Nogami
ピアノ Piano
千葉県出身。第8回青少年ショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)日本人初の第1位。第16回、第17回ショパン国際ピアノコンクール(ポーランド)ディプロマ。第5回野島 稔・よこすかピアノコンクール第1位。アルトゥール・シュナーベルコンクール(ドイツ)第2位。2018, 2020年度ロームミュージックファンデーション奨学生。 桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部を共に首席で卒業。ベルリン芸術大学大学院修了、同大学で国家演奏家資格を取得。2021年度より桐朋学園大学音楽学部弦楽器部会嘱託演奏員。これまでに下田幸二、高橋多佳子、野島 稔、ビョルン・レーマンの各氏に師事。
小井土文哉 Fumiya Koido
ピアノ Piano
第87回日本音楽コンクール、第15回ヘイスティングス国際ピアノ協奏曲コンクール(イギリス)をはじめ、国内外の多数のコンクールで優勝を果たす。2022年、英ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のソリストとして英国ツアーを行い好評を博した。 国内では読売日本交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、東京交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団等と共演。桐朋学園大学音楽学部を首席で卒業。桐朋学園ソリストディプロマコースを経て、イタリア・イモラ音楽院を修了。現在同音楽院ポスト・ディプロマコースに在学中。ボリス・ペトルシャンスキー、須田眞美子の両氏に師事。
若林 顕 Akira Wakabayashi
ピアノ Piano
ベルリン芸術大学などで研鑽を積む。20歳でブゾーニ国際ピアノ・コンクール第2位、22歳でエリーザベト王妃国際コンクール第2位の快挙を果たし、一躍脚光を浴びた。N響やベルリン響、サンクトペテルブルク響といった国内外の名門オーケストラやロジェストヴェンスキーら巨匠との共演、国内外での音楽祭、室内楽やソロ・リサイタル等、現在に至るまで常に第一線で活躍し続けている。サントリーホールや東京芸術劇場でのソロ・リサイタルのほか、「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲シリーズ」(3回)、「ショパン:ピアノ作品全曲シリーズ」(全15回)を行った。第3回出光音楽賞、第10回モービル音楽賞奨励賞、第6回ホテルオークラ賞受賞。
伊藤 恵 Kei Itoh
ピアノ Piano
83年第32回ミュンヘン国際音楽コンクールで日本人初の優勝。サヴァリッシュ指揮バイエルン州立管と共演し、ミュンヘンでデビュー。ミュンヘン・シンフォニカ、フランクフルト放送響(現hr響)、ベルン響、チェコ・フィルの定期公演に出演。日本ではN響をはじめ、各オーケストラと共演。録音はシューマン・ピアノ全曲録音他多数。「シューベルト ピアノ作品集6」が15年度レコード・アカデミー賞(器楽部門)、第70回文化庁芸術祭賞を受賞。最新盤は「ベートーヴェン ピアノ作品集2」(フォンテック)。93年日本ショパン協会賞、94年横浜市文化賞奨励賞受賞。現在、東京藝術大学教授、桐朋学園大学特任教授。
高関 健 Ken Takaseki
指揮 Conductor
国内主要オーケストラで重職を歴任し、現在東京シティ・フィル常任指揮者、仙台フィル常任指揮者、富士山静岡交響楽団首席指揮者。サンクトペテルブルグ・フィル定期演奏会など海外への客演も多く、世界的ソリストや作曲家、特にマルタ・アルゲリッチからは3回の共演を通じて絶大な信頼を得る、緻密なスコア分析からスケールの大きな音楽を作りだす名匠。
新国立劇場での團伊玖磨「夕鶴」、ストラヴィンスキー「夜鳴きうぐいす」、チャイコフスキー「イオランタ」、2019年にはウラジオストクとサンクトペテルブルグでも「夕鶴」を指揮するなど、オペラでも高評価を得る。
第50回サントリー音楽賞受賞。
東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
Tokyo City Philharmonic Orchestra
1975年設立。現在、常任指揮者に高関健、首席客演指揮者に藤岡幸夫、桂冠名誉指揮者に飯守泰次郎を擁し、定期演奏会のほかオペラ、バレエ、テレビ出演、CD録音までその活動は多岐にわたる。1994年から東京都江東区と芸術提携を結び、ティアラこうとうを主な拠点として定期演奏会をはじめ各種コンサートや区内小学校へのアウトリーチ活動など地域に根ざした音楽文化の振興を目的に幅広い活動を行っている。2021年5月には桂冠名誉指揮者飯守泰次郎の傘寿記念として「ニーベルングの指環」ハイライト特別演奏会(演奏会形式)を開催。コロナ禍での開催ながら、海外から世界最高峰のワーグナー歌手陣を招き大成功を収め、2022年8月に第30回三菱UFJ信託音楽賞を受賞。
第2回 ピアノGALA
2024年5月18日(土)15:00開演(14:15開場)
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本堂竣哉 (第9回コンクール 第1位)
J.S.バッハ
ファンタジアとフーガ イ短調 BWV904
トッカータ ニ長調 BWV912 -
安並貴史 (第7回コンクール 第1位)
シューベルト
即興曲 第3番 D899 Op.90-3
ドホナーニ
トッカータ Op.17-2
ブラームス
創作主題による変奏曲 ニ長調 Op.21-1
ドホナーニ
アリア Op.23-1 -
野平一郎 (第2回~第7回コンクール 審査委員)
J.S.バッハ
平均律クラヴィーア曲集 第1巻より
第1番 ハ長調 BWV846/第8番 変ホ短調 BWV853
武満 徹
ピアノ・ディスタンス
レノン&マッカートニー(武満 徹 編曲)
ゴールデン・スランバー
武満 徹
閉じた眼Ⅱ -
上野 真 (第6回~第9回コンクール 審査委員)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第21番 ハ長調 Op.53 「ワルトシュタイン」 -
東 誠三 (第6回~第9回コンクール 審査委員)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110 -
迫 昭嘉 (第1回~第5回コンクール 審査委員)
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111
出演者/プロフィール
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本堂竣哉
Shunya Hondo -
安並貴史
Takashi Yasunami -
野平一郎
Ichiro Nodaira
©YOKO SHIMAZAKI -
上野 真
Makoto Ueno
©Alina Zhdanova -
東 誠三
Seizo Azuma
©寺澤有雅 -
迫 昭嘉
Akiyoshi Sako
©武藤 章
本堂竣哉 Shunya Hondo
ピアノ Piano
北海道北見市生まれ。5歳のとき、グレン・グールドのJ.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲に衝撃を受け、以来バッハの音楽に魅了され続けている。2022年5月、第9回野島 稔・よこすかピアノコンクール本選にてゴルトベルク変奏曲を演奏、第1位入賞。11月に優勝記念公演をよこすか芸術劇場で開催、好評を博す。2022年8月、北海道北見市にて岡本卓徳(Vn)、塩飽桃加(Pf)とともに、『ベートーヴェン、バルトーク、フォーレヴァイオリンソナタ全曲演奏会(ベートーヴェン5曲、バルトーク全曲を担当)』開催。東京芸術大学音楽学部附属音楽高等学校を経て、東京芸術大学音楽学部ピアノ専攻2年在学中。現在、ピアノを伊藤 恵、大平由美子の各氏に師事。
安並貴史 Takashi Yasunami
ピアノ Piano
東京音楽大学大学院後期博士課程修了。第7回野島 稔・よこすかピアノコンクール優勝後、第14回シューベルト国際コンクール優勝や第10回浜松国際ピアノコンクール入賞をはじめ国内外で多数受賞。シューベルト国際音楽祭に招待される。これまでにデュースブルク管弦楽団、東京交響楽団等と共演。ピアノを石井克典、F・ガーボル、故・野島 稔に師事。現在はイギリスのギルドホール音楽演劇学校に留学し、R・オホラに師事。CD「ドホナーニ 4つの狂詩曲」をリリース後、2023年2月にはセカンドアルバムをドイツでレコーディングし、各都市で開催されたリサイタルはドイツ紙で大きく評価された。日本ショパン協会正会員。
野平一郎 Ichiro Nodaira
ピアノ Piano
東京藝術大学大学院修了後、パリ国立高等音楽院に学ぶ。現在、作曲家、ピアニスト、指揮者、教育者として国際的に活躍する音楽家。ピアニストとしては内外のオーケストラにソリストとして出演する一方、多くの国際的名手たちと共演し、室内楽奏者としても活躍。近年は自作自演を含めた指揮活動も多い。第13回中島健蔵音楽賞、第44回、第61回尾高賞、芸術選奨文部大臣新人賞、第11回京都音楽賞実践部門賞、第35回サントリー音楽賞、第55回芸術選奨文部科学大臣賞、日本芸術院賞、第52回ENEOS音楽賞洋楽部門本賞などを受賞。2012年紫綬褒章を受章。現在、静岡音楽館AOI芸術監督、東京文化会館音楽監督。東京藝術大学名誉教授、東京音楽大学学長。
上野 真 Makoto Ueno
ピアノ Piano
カ-ティス音楽院にて、J.ボレット、G・グラフマン、ザルツブルク・モーツァルテウムにてH.ライグラフ各氏に師事。メリーランド、ベーゼンドルファー=エンパイア、ジュネーヴ、オルレアン20世紀、リヒテル等の国際コンクールで入賞。世界15か国で演奏を行う。近年は19世紀から20世紀前半のフォルテピアノやピアノの銘器によるレコーディングに力を入れており1816年製ブロードウッドとベートーヴェン、1925年製ニューヨーク・スタインウェイとラフマニノフ、1846年製プレイエルとショパン、1851年製エラールとリスト、1906年製ベヒシュタインと20世紀初頭の作品等でCDをリリース。現在京都市立芸術大学音楽学部教授。名古屋音楽大学客員教授。
東 誠三 Seizo Azuma
ピアノ Piano
東京音楽大学卒業後、フランス政府給費留学生としてパリ国立高等音楽院に留学。1983 年第52回日本音楽コンクール第1位をはじめ、数多くの国際コンクールにて優勝・入賞。国内、ヨーロッパ、北米などでリサイタル、オーケストラと共演。98年第24回ショパン協会賞受賞。CDは「ラ・カンパネラ~リスト名曲集」、ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全曲演奏会シリーズのライブ録音全9 集等、いずれも高い評価を受ける。12年、ジュネーヴ国際音楽コンクール・ピアノ部門審査員。活発な演奏活動と共に、東京藝術大学教授、東京音楽大学特任教授を務める。また、近年では、日本音楽コンクールをはじめ、数々のコンクールの審査を務めている。日本ショパン協会理事。
迫 昭嘉 Akiyoshi Sako
ピアノ Piano
中山靖子、クラウス・シルデ各氏に師事。ジュネーヴ国際音楽コンクール最高位、ハエン国際ピアノコンクール優勝およびスペイン音楽賞(1983)、ABC国際音楽賞受賞(1998)。デビュー以来、気品ある音色と透明度の高いリリシズムを持つピアニストとして、日本はもとより海外でもソロ、オーケストラとの共演のほか、室内楽奏者としても内外の一線で活躍する演奏家達と数多く共演し、いずれも高い評価と信頼を得てきた。最近では2015年からスタートした2台ピアノによるベートーヴェン(リスト編曲)の第九とそれに関連した作品を演奏する「迫昭嘉の第九」公演が毎年好評を博している。東京藝術大学理事・副学長、音楽学部教授、東京音楽大学特任教授、洗足学園音楽大学大学院客員教授。
©武藤 章
出演者からの
メッセージ
出演者からのメッセージ | 野上真梨子
野島先生との出会いは第5回コンクールの時でした。優勝記念リサイタルでは終演後すぐに舞台袖に来てくださり、温かいお言葉をいただいたのが嬉しかったのを思い出します。そして、受賞した年からドイツに留学するまでの約2年間、野島先生の元で勉強させていただきました。先生から教えていただいた時間は大変貴重なものでした。特に響きを追究することに対しての教えは深く心に刻まれており、レッスン中に時折弾いてくださった先生の音色の美しさは今でも忘れられません。
モーツァルトのピアノ協奏曲第27番は野島先生が生前に演奏された最後の協奏曲です。先生の教えと数々のお言葉を胸に、精一杯演奏させていただきます。
出演者からのメッセージ | 小井土文哉
私が野島稔先生の事を最初に知ったのは、高校生の時に聴いた「ノジマ・プレイズ・ラヴェル」でした。その素晴らしい演奏に、畏れを感じるほど圧倒されたことを鮮明に覚えています。先生と直接会ってお話しする機会は多くはありませんでしたが、特に印象に残っている出来事は、霧島国際音楽祭で講師としていらしていた先生のレッスンを拝聴した際でした。ベートーヴェンの「皇帝」、1楽章冒頭の序奏だけでレッスンの1時間がほとんど終わってしまいました。あのピアニズムは、この徹底したこだわりからくるものなのか!と、やけに腑に落ちた感覚がありました。メモリアル・コンサートではラフマニノフの2番を演奏させていただきます。先生に「ダメね。」と言われないように、良い演奏をしたいと思います。
出演者からのメッセージ | 若林 顕
心から敬愛する野島稔先生の、メモリアル・コンサートに出演させていただく事を、とても光栄に思っております。今回弾かせていただくプロコフィエフのピアノ協奏曲第2番は、野島先生の特に想い入れの強い、大事なレパートリー、と度々仰っておられました。パッションや音量、テクニック、等では表現しきれない、何か暗示的で、奥深い巨大なメッセージのようなものが、この曲には内在されているように感じます。野島稔先生への心からの尊敬の念と感謝を込め、またこの曲の真髄に少しでも近づけるような音楽が出来れば、と思っております。
出演者からのメッセージ | 伊藤 恵
高潔な精神から自らの芸術には厳しく、しかし後進には温かな眼差しを注ぐ― 野島 稔先生は、いつも含蓄深い心に響くお言葉をかけてくださいました。<野島 稔・よこすかコンクール>では、出場者全員がベートーヴェンのソナタを準備する課題がありました。教育者としての先生は、次世代を担う演奏家へ「音楽で哲学する」ことの重要性を問い、範を示されたのだと思います。野島 稔先生のメモリアル・コンサートで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の最高峰と称すべき「皇帝」を演奏できることは身に余る光栄です。先生の真摯な音楽への情熱に感謝しながら、心を込めて演奏させて頂きます。
出演者からのメッセージ | 本堂竣哉
昨年、バッハのゴルトベルク変奏曲という大作に取り組んで以来、「ピアノでバッハを弾くとはどういうことか」「現代にバッハを演奏するとはどういうことか」といったことについて、長く自分の中に葛藤がありました。その葛藤は大きく膨れ上がり、「ピアノを弾くとは果たして私がやるべきことだろうか?」というところまで行きましたが、勉強や思考の末、徐々にその長いトンネルの中に光が見えてきました。今回、またこの素晴らしいホールで皆様と、偉大な故人への追悼と共にバッハの恩恵を享受する機会をいただいて、とても嬉しく思っています。
出演者からのメッセージ | 安並貴史
今回は尊敬しているピアニストの方々とご一緒に、再び横須賀の地で演奏できますこと、大変光栄です。野島先生から教わったことは本当にかけがえのないことばかりでした。レッスンでは、私にはとても出すことが出来ない音を、先生は夢のようにどんどんと紡がれていました。まさしく魔法にかけられたような状態であった私は、先生の所作全てから一生懸命に学んでいました。音楽や作品に対する深淵な愛情と熱量、そしてピアニストとして追求し続けられていた先生の弾くお姿と笑顔が忘れられません。野島先生が会場のどこかで聴かれていて、今日の演奏は良かったと感じていただけるように、少しでも成長した音楽を奏でて驚いていただけるように、真摯に音楽と向き合いたいと思います。
出演者からのメッセージ | 野平一郎
野島先生との思い出は、もちろんいろいろあって尽きない。
私は芸大の作曲科出身で間宮芳生クラスにいた。ちょうど野島先生がリリースされた間宮先生のピアノソナタ第2番/ピアノ協奏曲第2番のレコードが出た時だった。それを聴いた衝撃、ともかくもこれが私なりの野島先生理解の原点である。今回先生の日本人作曲家レパートリーから少し外れて、でも日本の作品を少しでも弾きたかったのもここにある。そして先生のライブCDで平均律から何曲か聴かせていただいたことも頭から離れない。その音楽はいずれも神業であり、涙が出てくるほど美しい音で弾かれ、対位法がさまざまな色彩で渦巻いていた… こんなことが可能なのだろうか… どこまで迫れるのだろう…
出演者からのメッセージ | 上野 真
フランスではオーロラと呼ばれるこのワルトシュタイン・ソナタは、ハ長調という調性から明朗さを直ちに連想させますが、同時に自然(界)の神秘性や宗教的な神性、叡智も感じさせます。
同時に大変ピアニスティックな側面を持つ為、19世紀初期のフォルテピアノでの演奏と現在のピアノで演奏する事の差異が大きくなる作品の1つです。
一生を音楽に、そしてベートーヴェンに捧げられた野島稔先生に喜んでいただける様な演奏にしたいと思っております。
出演者からのメッセージ | 東 誠三
“野島稔先生が亡くなられた“というお知らせは、私にとって大きな衝撃でした。私にとって野島稔先生は恩師でもあります。12歳の時に初めて先生のご指導を受ける機会に恵まれました。お忙しい先生ですからそれほど頻繁にご指導を受けることはできませんでしたが、そのレッスンの一回一回で得られた驚きと感動は、私がピアノを続けるための大きな原動力となりました。先生は、単にピアノを弾くことへの並外れた追求だけでなく、音楽の本質を常に深く洞察される方でした。その先生が口癖のようにおっしゃられていた事が「ベートーヴェンの大切さ」です。このコンサートでは、その先生のお言葉を胸に、ベートーヴェンの傑作である作品110のソナタを、精一杯演奏させて頂きます。
出演者からのメッセージ | 迫 昭嘉
大分年月が経ってしまいましたが、私が野島 稔・よこすかピアノコンクールで審査委員を務めさせていただいた第1回から第5回の間に審査委員のコンサートが3回行われました。その2回目、オール・ベートーヴェンプログラムでは、野島先生が32番のソナタを弾かれました。熱く、しかも精緻に演奏された先生の姿はいまでも記憶に残っています。その先生が急逝され、まさかのメモリアル・コンサート。先生への想いとともにこのソナタ作品111を演奏させていただきます。
出演者からのメッセージ | 高関 健
野島稔さんと共演できたのは30年以上前に2回だけでした。曲目はチャイコフスキー第1番とバルトーク第3番。先輩は飄々とした感じで練習にお見えになり、事前の打ち合わせもそこそこにピアノに向かわれるのですが、ひとたび演奏が始まるとたちまちあの厳しい野島トーンに。特にバルトーク第2楽章の張り詰めた表現とキラキラ輝く音色はいまでもしっかりと記憶しています。
後年東京音楽大学の学長先生としてオーケストラの演奏会でお目にかかるときは、いつもの柔和な表情に戻っておられました。この度、野島さんの大きなな業績を偲びつつ、野島さんと深い交流を持たれたピアニストの皆さんと共演いたします。存分にお楽しみいただければ幸いです。
野島 稔の不思議な偉大さが現れる2日間
コンサート監修/第9回野島 稔・よこすかピアノコンクール審査員長代行
梅津時比古
野島 稔・よこすかピアノコンクールの名称は、野島先生が自ら望んで付けたものではありません。野島先生が最後まで抵抗なさっていたのを、私が押し切りました。
このコンクールの予選でベートーヴェンのピアノ・ソナタの全楽章を弾く課題は、最初から最後まで、野島先生が変えなかったものです。このようなコンクールは世界に他にありません。
野島先生はベートーヴェンだけのスペシャリストではありません。聴衆は野島先生のバッハに心が洗われ、シューベルトに美しい狂気を感じます。シューマンの音を聴くと夢のさなかにいるよう。ラフマニノフには深い雪を思い、プロコフィエフに精神の途轍もない幅を教えられます。すべてのスペシャリストでした。
「パチンコ玉はラヴェルの音のように美しい」とパチンコが好きだった野島先生が口にしたという伝説は本当です。その野島先生のラヴェルの演奏は、この世のものとは思えないほど魅力的で、そして精神の孤独を突きつける。
これらのことはコンサート、レッスンを通し、お付き合いを経て、自然に周りの人の心に染み入り、伝わっています。今回の2回のコンサートでは、必ずや、野島先生の不思議な偉大さを思い出すでしょう。
ピアノ愛が高鳴るトリビュート・コンサート
音楽ライター 城間勉
野島 稔氏は、コンクールの審査の際、どのような演奏を高く評価しますか?という問いに対し「審査していることを忘れさせてくれる演奏かなぁ、、あとはベートーヴェンだと緩徐楽章での表現ですかねぇ、、」といったことを常々おっしゃっていたが、これ考えてみるにかなりハードルの高い要求ではなかったろうか。技術的な部分以上に演奏家の音楽性や経験値が問われるのだから。しかも毎回ベートーヴェンのソナタというピアノ曲の聖典が課題となっていたのである。実際のところ、難関を突破し優勝・入選を果たした人たちは現在檜舞台で活躍している実力者たちばかり。
今回、コンクール時よりも一段と成長を遂げている新鋭・俊英4人と、野島氏とともに審査委員を務めた「現役」として活躍し日本のピアノ界を牽引する名匠6人が競演するというピアノファンにとって最高に興味深い(ある意味スリリングでもある)コンサートが全2回の形で、しかも名曲コンチェルトとソロという盛りだくさんの内容で実現する。これだけの奏者と多彩な演目(バッハからジョン・レノンまで!)を見れば、もはや“ピアノ・フェスティバル”と呼んでも過言でない。9回にわたり行われた「野島 稔・よこすかピアノコンクール」と同じ会場である豊かな響きの大ホールのなかで、野島氏自身の格調高い演奏や穏やかな人柄に思いをはせながらピアノ芸術の深い世界を多くの人と存分に満喫したい。
チケット(全席指定・税込)※来場者にはメモリアル・ブックを差し上げます。
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第1回ピアノ協奏曲
S席:6,000円 A席:5,000円 B席:4,000円
学生(24歳まで):2,000円 -
第2回ピアノGALA
全席指定:4,000円
学生(24歳まで):1,000円 -
2公演セット券(電話と窓口のみ取り扱い)
S席:9,500円 学生(24歳まで):2,500円
- 未就学児童は入場できません。
- 劇場プレミアム倶楽部の会員割引あり(定価の10%引、学生席を除く)。
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★市内在学・在校の小・中・高校生100名を無料でご招待★
※リンクは削除いたしました。 -
- 窓口
- 横須賀芸術劇場1階/サービスセンター内(10:00〜17:00)
- 電話
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電話予約センター 046-823-9999
プレミアム倶楽部専用ダイヤル 046-823-7999 - 託児サービスあり
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第1回...4月25日(木)/第2回...5月13日(月)までの事前予約制
ミラクスシッター 0120-415-306(月〜金 9:00〜19:00) - お問い合わせ
- 公益財団法人横須賀芸術文化財団 046-828-1603
野島 稔
1945年横須賀市に生まれ、3歳からピアノを始める。桐朋高校、桐朋学園大学、ソビエト留学まで故・井口愛子氏に師事。高校3年の1963 年に第32回日本音楽コンクール第1 位大賞受賞。1966年ソビエト文化省の招きでモスクワ音楽院に留学、レフ・オボーリン氏に師事した。1968年海外派遣コンクール優勝、1969年に第3回ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで第2位に入賞し、1970年のニューヨークのカーネギー・ホールデビューリサイタルで大成功を収める。以降、世界各地でリサイタルや国内外の主要オーケストラとの共演など目覚ましい活躍を遂げた。
1986年にはモスクワ、1988年レニングラードで松村禎三氏のピアノ協奏曲第2番を演奏し、いずれも最大の賛辞を集めた。1992年にはNHK交響楽団との数々の名演が評価され、有馬賞受賞。1994年にサントリーホールで「野島 稔・プレイズ・ラヴェル」を行い「近来まれに見る最高級の演奏」「奇跡的な技術と磨き抜かれた音楽性の円熟の極致」など絶賛を博した。桐朋学園大学特任教授、桐朋学園大学院大学教授を歴任。2001年からは仙台国際音楽コンクールピアノ部門審査委員長、2006年からは自身の名を冠した「野島 稔・よこすかピアノコンクール」審査委員長をつとめ、2011年には東京音楽大学学長に就任、後進の育成にも尽力した。第57回神奈川文化賞、第70回日本芸術院賞受賞。
野島 稔・よこすかピアノコンクール
横須賀市制100周年を記念して2006年に創設。横須賀市出身の世界的ピアニストである野島稔氏を審査委員長に迎え、日本国内の若く才能あるピアニストの発掘と育成および音楽文化の普及と振興を目的として、横須賀市との共催により隔年で開催し2022年まで全9回実施しました。(第8回コンクールは新型コロナウイルス感染症の影響により中止)
本コンクールは、野島氏のピアニストとしての理念に基づいた特長的な課題曲を設定したり、出場者が予選から本選まで一貫して大劇場で演奏でき、審査委員との交流も図れるなど、参加者にとってのステップアップの場として認知いただき、全国から延べ 640名の若いピアニストが参加しました。入賞・入選者には、財団主催の公演への出演機会を提供するなど、継続的な支援も行いました。
また、コンクール期間中は、予選・本選とも一般無料公開することで、市内外を問わず、多くの方に若いピアニストの多様な演奏を鑑賞する機会を提供しました。
これまで参加したピアニスト達が、現在では演奏家として、教育者として日本の音楽界の様々な場面で活躍をしており、本事業は日本のクラシック音楽界の振興と地域における音楽文化の普及に貢献しました。
野島 稔・よこすかピアノコンクールWEBサイト