劇場が誇る2つの合唱団の合同演奏会　「横須賀芸術劇場合唱団＆少年少女合唱団ウィンター・コンサート」公演レポート

　昨年、12月８日（日）に横須賀市文化会館で横須賀芸術劇場専属の2つの合唱団（横須賀芸術劇場合唱団と横須賀芸術劇場少年少女合唱団）が、15年ぶりに合同演奏会を行いました。
　それぞれ毎年12月に「第九」演奏会と「クリスマス・コンサート」をよこすか芸術劇場（大劇場）で行っていますが、横須賀芸術劇場が開館して30年という節目の年を記念し、改修工事のため休館中のよこすか芸術劇場から会場を横須賀市文化会館に移し、合同の開催となりました。

　前半は、少年少女合唱団が「クリスマス名曲集」と題し、小学2年生から高校3年生までの100名がクリスマスにちなんだ楽曲の数々を演奏し、後半は、大人の合唱団130名がベートーヴェンの交響曲第9番の第4楽章を2台ピアノ版で演奏しました。

＜第1部＞横須賀芸術劇場少年少女合唱団　“クリスマス名曲集”

　オープニングはミドルクラス（小学5年生～中学2年生）とシニアクラス（中学3年生～高校3年生）による「子羊 Little Lamb（コンソラシオンⅡ）」。2014年に合唱団が委嘱した作品で、無垢な子どもたち＝子羊をテーマにしています。その後「タントゥム・エルゴ Tantum ergo（フォーレ）」、「アヴェ・マリア Ave Maria（サン＝サーンス）」、「主はあなたを恵みて守り The Lord bless you and keep you （ラター）」、「アヴェ・ヴェルム・コルプス Ave Verum Corpus（プーランク) 」と宗教曲が続きます。イエス・キリストの誕生日＝クリスマスにぴったりな厳かで清らかなハーモニーをお贈りしました。

　少年少女合唱団でのクリスマス・コンサートでは、国際合唱連盟（IFCM）が定める「世界合唱の日（＊）」へ参加をしています。この日は、代表の3名が声明文を読み上げました。

　＊世界合唱の日：国際合唱連盟（IFCM）が1990年に創設した国際合唱イベント。世界の人々が連帯し、平和を築き、そして相互理解を深めるために、合唱のコンサートや、合唱祭などを通して“音楽の力”を人々に伝える目的で行われている。毎年12月の第二日曜日がその日にあたる。

　続いて、ジュニアクラスの登場です。クリスマス・キャロル「神の御子はこよいしも」と子どもに人気のウィンター・ソング「北風小僧の寒太郎」を元気いっぱいに歌い上げ、会場は明るく和やかなムードに包まれました。

　第1部の後半では、クリスマスの時期になると街中で聞えてくるお馴染みの「さやかに星はきらめき Oh Holy Night（アダン）」、「ディン・ドン高らかに！（武藤道子編曲）」、「ウィー・ウィッシュ・ア・メリー・クリスマス We Wish You A Merry Christmas（武藤道子編曲）」を演奏。ペンライトを使った演出もあり、「きよしこの夜」を会場のお客様と一緒に歌い、クリスマスの暖かな雰囲気を共有することができました。

　そして、「今日キリストはお生まれになった Hodie Christus natus est (グレゴリオ聖歌)」を詠唱しながら退場して第1部が終わりました。

＜第2部＞横須賀芸術劇場合唱団　“歓喜の歌”

　第2部は20代～80代のメンバーからなる130名による“ベートーヴェンの交響曲第9番 作品125「合唱付き」です。創設して29年を迎えるこの合唱団。”人と心を通わせながら歌うのが楽しい！“、“みんなで一つの曲を創り上げていくことが嬉しい” という気持ちで、長く所属している団員も多いのが特徴です。例年、横須賀交響楽団との共演で演奏をしていますが、今年はリスト編曲（清水 新 改訂）の2台ピアノ版で第4楽章を演奏しました。（ピアノ：松本康子、清水 新）

　また、夏に110名の応募者からオーディションで選ばれたソリスト達は、日本の音楽界で活躍している声楽家の面々たち。バスパートの第1声“O Freunde, nicht diese Töne!（オー・フロインデ　ニヒト・ディーゼ・トェーネ！おお友よ！この調べではない！）”から始まり、“Freude,（フロイデ　歓喜よ）”と歌うと合唱のバスパートが“Freude,（フロイデ）” と呼応。その後、ソプラノ・アルト・テノールのソロと合唱もそれぞれ熱のこもった演奏を繰り広げクライマックスを迎え、まさに”歓喜の歌“となりました。

＜アンコール＞

　アンコールは「蛍の光」。それぞれ長く活動をしていますが、初めて合同での演奏となりました。今回、横須賀出身の作編曲家 アベタカヒロ氏の編曲による2台ピアノ伴奏版を、1番は少年少女合唱団が、2番は大人の合唱団が歌い、3番はハミングを全員で合唱しました。ペンライトを掲げる幻想的な演出と世代を越えた230名の合唱団員が心を通わせて生み出すハーモニーは大きな感動を呼びました。

　こうして横須賀芸術劇場が誇る２つの合唱団の演奏会は、万来の拍手の中、幕を下ろしました。ご来場ありがとうございました。これからも地域の皆様に愛される合唱団として活動してまいります。どうぞよろしくお願いいたします。

横須賀芸術劇場合唱団＆少年少女合唱団ウィンター・コンサート

第1部
指　揮　渕上千里（少年少女合唱団　常任指揮者）
　　　　廣橋英枝（少年少女合唱団　指揮者）
ピアノ　水戸見弥子（少年少女合唱団　ピアニスト）
合　唱　横須賀芸術劇場少年少女合唱団

第2部
指　揮　梅沢一彦（合唱団　常任指揮者）
ソプラノ　中川郁文
アルト　　城守　香
テノール　中村祐哉
バス・バリトン　大塚博章
ピアノ　松本康子（合唱団　主任ピアニスト）
　　　　清水　新（合唱団　ピアニスト）
合唱　　横須賀芸術劇場合唱団
合唱賛助出演　防衛大学音楽部
ドイツ語指導　大沼 徹
音楽スタッフ　松本康子、石倉孝行、川元真里、清水 新

主催　公益財団法人横須賀芸術文化財団
共催　よこすか文化パートナーズ
協賛　京浜急行電鉄株式会社 / 山崎製パン株式会社

～Program～

第1部　　J=ジュニア・クラス　M＝ミドル・クラス　S＝シニア・クラス
Little Lamb （リトル・ラム）　　W.ブレイク 作詩／A.コンソラシオンⅡ世 作曲　　MS
　＊2014年委嘱作品
Tantum ergo （タントゥム・エルゴ）　　G.フォーレ 作曲　　MS　　　
アヴェ・マリア　　C.サン・サーンス 作曲　　MS
主はあなたを恵みて守り　　ヘルヴィック貴子 日本語詞／J.ラター 作曲　　M
Ave Verum Corpus（アヴェ・ヴェルム・コルプス）　　F.プーランク 作曲　　MS
《世界合唱の日　声明》
神のみ子はこよいしも　　讃美歌1-111番　　J
北風小僧の寒太郎　　井出隆夫 作詞／福田和禾子 作曲　　J
さやかに星はきらめき　　海野洋司 日本語詞／A.アダン 作曲 /　信長貴富 編曲　　MS
ディン・ドン高らかに！　　武藤道子 編曲　　MS
We Wish You A Merry Christmas　　武藤道子 編曲　　JMS
きよしこの夜　　由木 康 日本語詞／F.グルーバー 作曲／アベタカヒロ 編曲　　JMS
今日キリストがお生まれになった　　グレゴリオ聖歌　　JMS

第２部
L.vベートーヴェン（L.v.Beethoven）
交響曲 第９番 ニ短調 作品125「合唱付き」より（from Symphony No.9 in D minor Op.125 “Choral”）
Ⅳ　プレストーアレグロ・アッサイ　Presto ― Allegro assai

アンコール
螢の光　横須賀芸術劇場合唱団、横須賀芸術劇場少年少女合唱団、２台のピアノのための
　稲垣 千穎 訳詞／スコットランド民謡／アベタカヒロ編曲