デビューから55年以上たった今も、第一線で活躍を続ける前橋汀子さん。5月の公演を前にして、インタビューにお答えくださいました。
Q.前橋さんはソリストとして55年以上、第一線で活躍されていらっしゃいますが、近年では室内楽や弦楽アンサンブルとの共演も精力的に行われています。こうした活動にも力をいれるきっかけは何だったのでしょうか?
(前橋) 長らくソリストとして演奏し続けてきました。その中で「もっとクラシック音楽を身近に、気軽に、大勢の方にホールに足を運んでいただき、生の演奏を聴いてもらいたい」との思いが強くなりました。4年前からは念願だった室内楽、弦楽カルテットにも取り組んでいます。
Q.今回の横須賀公演では、弦楽アンサンブル用にアレンジされた名曲がずらりと並んでいますね。
(前橋) 才能豊かな丸山貴幸さんの編曲で、弦楽合奏ならではの音の響き、アンサンブルの魅力が存分に発揮されていると思います。
Q.今回の弦楽アンサンブルのメンバーについてご紹介いただけますか?
(前橋) コンサートマスターの森下幸路さんとは長年色々な場面で一緒に演奏しています。若い音楽家の皆さんはそれぞれの楽器で日本の音楽界のリーダーとして活躍されている方たちです。彼らと共演する事はとても新鮮で刺激的です。
Q.今回、横須賀で演奏するプログラムの中で、前橋さんにとって特に思い出深い曲はありますか?また、そのエピソードがありましたら教えてください。
(前橋) かつて、私はヴィヴァルディの「四季」を理解するために、ヴィヴァルディが住み、作曲したヴェネツィアを何度か訪れました。イタリアのヴァイオリンの名手ピエロ・トーソさん、ミラノ・スカラ弦楽合奏団のメンバーと共演し、多くの事を学びました。
Q.現在の楽器は、何年間使っていらっしゃいますか?また、その音色の特徴を教えてください。
(前橋) 2003年にロンドンでこの楽器に出会いました。1736年製のデル・ジェス・グァルネリウスです。100年間、貴族の館で眠っていた楽器なので、若々しく活力に満ちています。この楽器に出会えたことで、私自身、色々な事に取り組む意欲を掻き立てられます。
Q.現在、探求したいことはなんでしょうか?
(前橋) ベートーヴェンの弦楽カルテット、バッハの無伴奏ソナタ・パルティータの全曲演奏の再挑戦、弦楽アンサンブル等々です。
Q.最後に、横須賀芸術劇場のお客様へ一言お願いします。
(前橋) 若々しい音楽家達と共演する名曲の数々を是非一人でも多くのお客様に聴いていただけたら嬉しいです。
常に新たなチャレンジを続ける前橋汀子さん。その意欲的な取り組みの一つとして行われる今回の演奏会では、前橋さんの名器グァルネリウスの瑞々しく、煌びやかな音色と弦楽アンサンブルとのハーモニーで名曲の数々をお贈りいたします。初夏の一時をゆったりと過ごしてみませんか?