本年度の「オペラ宅配便シリーズ」は昨年度に続き、番外編として、オペラ作曲家の歌曲作品をリサイタル形式でお贈りします。
前回は、天才作曲家モンテヴェルディ作曲の長大なオペラ・アリア「アリアンナの嘆き」とその宗教的替え歌「聖母の涙」や、モーツァルトの初期オペラ・アリアからの転用リート作品など、オペラ黎明期の傑作から古典派に至る”替え歌”にスポットライトを当てたプログラムをお贈りしました。
今回は、替え歌ならぬ”替え曲”、つまり歌曲の歌詞やオペラ・アリアとして書かれた台本のテキストを、他の歌曲の歌詞として転用した作品をお聴きいただこうと思います。ひとくちに”転用”と言っても、それはかなり大規模なもので、時には何十人もの作曲家によって、同一のテキストに何十曲という曲が付けられたのです。
皆さんも、学校の音楽の授業で、ゲーテの「野ばら」の詩に、シューベルトとヴェルナーがそれぞれ作曲したものを聴き比べたことがあるのではないでしょうか?あれもまさしく替え曲の代表とも言える例です。
私は、昭和のアニメと漫画で育った世代に属する者ですが、どことなくスリリングでミステリアスなサウンドによるアニメ版「月光仮面」の主題歌と、なんとなくのんびりとした旋律の実写版「月光仮面」主題歌の、あまりの違いに愕然としたことを今でも覚えています。
オペラから歌曲への転用例を挙げると、18世紀のイタリアで大活躍した台本作家メタスタージオの『ペルシャ王シロエ』に登場するアリア「黙って嘆こう」は、『セビリアの理髪師』『ウイリアム・テル』などの代表作で知られるロッシーニによって、歌曲のテキストとして採用されています。しかもロッシーニはこのひとつの歌詞に、独唱用だけでも28曲以上作曲しています。
ロッシーニがたったひとつの歌詞から何十曲もの作品を生み出したこともすごいですが、元のテキストの生みの親であるメタスタージオの人気はさらに凄まじいものです。例えば彼の「オリンピーアデ」という台本には、少なくとも53人の作曲家が曲を付しています。メタスタージオは生涯に27作のオペラ台本を残していますが、それらの台本には何百回も作曲がなされているのです。
歌手陣には、国内外数々のコンクールで優勝し、ボローニャ市立歌劇場でヴェルディ『椿姫』の主役を演じるなど、近年活躍目覚ましいソプラノ田中絵里加、同じく国内外数々のコンクールで優勝および上位入賞を果たし、デビュー・アルバムをリリースするなど、人気実力を兼ね備えたソプラノ秋本悠希の2人を、ピアニストには、声楽伴奏のスペシャリストとして活躍、ソリストとしての評価も高く、様々なコンサート企画なども手掛ける才人、朴令鈴を迎えます。
特別なかたちでお贈りする「オペラ宅配便」をどうぞお楽しみに♪
2024年 2月25日 (日) 14:00開演 (13:30開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
S席:4,000円 A席:3,500円
出演
曲目
プッチーニ 太陽と愛 Sole e Amore
ロッシーニ 約束 La Promessa
ヘンデル あなたを愛せなくなるなんて Ch’io mai vi possa
ウェーバー あなたを愛せなくなるなんて Ch’io mai vi possa
ロッシーニ 旅立ち La Partenza
ベートーヴェン さあ あの辛い時が Ecco quel fier istante
モーツァルト さあ あの辛い時が Ecco quel fier istante
ロッシーニ フィレンツェの花売り La fioraia fiorentina
ロッシーニ 黙って立ち去ろう Mi lagnerò tacendo
とがめだて Il rimprovero
子守唄 Dodo des enfants