YOKOSUKA ARTS THEATRE

ショスタコーヴィチとキング・クリムゾンを2人の音楽評論家がその魅力を伝える 第3回 複雑な曲構成、高い演奏力、大作志向そしてシリアスで文学的な歌詞を持った突飛なバンド=キング・クリムゾン

音楽ライター 人見欣幸

 異色の実力派弦楽四重奏団 モルゴーア・クァルテットの公演を控え、ショスタコーヴィチとキング・クリムゾンの魅力を紹介

 1960年代後半には、ロックンロール/ポップの主要リスナーであるベイビー・ブーマーがハイティーンになり、シングルではなくアルバムが買えるようになり始めた。またミュージシャンも録音技術の進歩という後押しを受けて「三分間の踊らせる為の音楽」ではない「四十五分の作品」を作るのが主流となっていった(この頃から「ロール」が取れて「ロック」と呼ばれることが多くなっていく)。ザ・ビートルズの『ラバー・ソウル』(1965)以降の変化が牽引したと言えるだろう。

 それを踏まえると、複雑な曲構成、高い演奏力、大作志向そしてシリアスで文学的な歌詞を持った突飛なバンド=キング・クリムゾン(クリムズン)の登場は時代的必然だったのかもしれない。

 69年のデビュー・アルバム『クリムゾン・キングの宮殿』は、その衝撃的なアルバム・カヴァー(LPサイズだからこそのデザイン)と、それを上回るほど衝撃的な内容が話題となった。静と動の対比、緩急に富んだ編曲、フォーク/民謡から現代音楽/フリー・ジャズも取り入れた広範さ、スロウ・ナンバーでの美しい歌声といった要素は、進歩的・先鋭的・革新的なロック=プログレッシヴ・ロックと呼ばれていく一派の「型」として定着したと言えるだろう。先行していたザ・ムーディー・ブルーズ、ピンク・フロイド、ディープ・パープル(デビュー時はハード・ロックではなかった)、イエス、ジェネシス、エマーソン、レイク&パーマー(モルゴーア・クァルテットが前回のコンサートで取り上げた)等と共にプログ・ロックはその名の通り進化していった。 クリムズンは活動停止・復活を繰り返しており、どの時期も充実した活動を行っているが、モルゴーア・クァルテットがレパートリーとしている曲はデビューからの最初の五年間に発表されている作品なので、本稿もこの時期に関する紹介を中心に進めていく事とする。この時期の彼等は同一パースネルで録音されたアルバムが一枚も無く、音楽性の変化も激しい。一貫しているのは「混沌・混乱」に向かって突き進む熱さだろうか。(続く)

モルゴーア・クァルテット
クラシック /プログレッシヴ・ロック名曲選 Vol.2 「世紀の饗宴」

モルゴーア・クァルテット クラシック&プログレッシヴ・ロック名曲選 第2弾

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2023年 11月19日 (日) 15:00開演 (14:30開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット

https://www.yokosuka-arts.or.jp/performance/detail/?id=2647