YOKOSUKA ARTS THEATRE

東京シティ・フィル 名曲コンサートの聴きどころ(柴田克彦)


 6月に行われる東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の名曲コンサートは、万人注目の公演だ。何といっても、近年のシティ・フィルは進化が目覚ましい。サウンドの精緻さと輝きがグングン増しているし、オーケストラ全体に表現意欲が漲っている。これは、2015年から常任指揮者を務める高関健の手腕に拠るところ大。高関は、群馬交響楽団等の水準を著しく向上させたオーケストラ強化の達人であり、堅牢かつ緻密な構築で楽曲の真髄を表出する信頼度抜群の名匠だ。彼のポスト就任後のシティ・フィルは、工夫されたプログラムに全力で取り組みながら、年々クオリティをアップさせ、演奏の密度と聴く者に与える充足感の高さにおいて、在京オーケストラ中、屈指の存在となっている。今回は3年ぶりの横須賀での公演。この間も両者のコンビネーションは大きく深化しているので、前回を知る方もそうでない方もこぞって生演奏を体験して欲しい。

 プログラムも魅力十分だ。1曲目のグリーグの組曲「ホルベアの時代から」は、典雅にして北欧の香り立つ名曲。ここでは弦楽合奏の醍醐味とシティ・フィルの弦楽器陣の豊潤できめこまかな響きを満喫できる。次のロドリーゴのアランフェス協奏曲は、スペインの哀愁漂うギター協奏曲の最高峰。第2楽章の甘美なメロディはポピュラー音楽としても知られている。同曲では、8年ぶりの横須賀登場となる人気ギタリスト、村治佳織のソロを聴けるのがまず嬉しい。曲はむろん彼女が演奏を重ねてきた十八番。しかも村治には、かつてスペインのロドリーゴ宅を訪れ、その作品を目前で披露するなど、最晩年の作曲者と直接の交流を果たした強みもある。それに何より、彼女の表情豊かで温かなソロには、誰しも魅了されること必至だ。加えて、共演者に絶妙に寄り添う高関のリードと、シティ・フィルの音色美にも期待が集まる。

 後半はモーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。天才の技法が結集されたこのモーツァルト最後の交響曲は、堂々たる曲調と無類の均整美を誇る傑作であり、中でも様々な動きが縦横に綾なす第4楽章は、音楽史上の奇跡とさえ呼ばれている。ここは高関の卓越した構築力と的確な表現力が最大限に発揮され、それに応えるシティ・フィルの精緻なアンサンブル─特に第4楽章の鮮烈な音の交錯─が耳を喜ばせるに違いない。

 一体感溢れる名コンビの演奏、スター・ソリストの妙技、そして多彩な名曲が揃った本公演に、ぜひ足を運びたい。

柴田克彦(音楽ライター)


東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 名曲コンサート

2021年 6月6日 (日) 15:00開演 (14:00開場)
よこすか芸術劇場
S席:5,600円 A席:4,600円 B席:3,600円
ペア券(S席):10,000円 プレミアム倶楽部サンクス料金(S席):4,600円

<出演>
指揮:高関 健
ギター(*):村治佳織
管弦楽:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

<曲目>
グリーグ 組曲「ホルベアの時代から」
ロドリーゴ アランフェス協奏曲(*)
モーツァルト 交響曲 第41番 ハ長調 K.551 「ジュピター」
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