YOKOSUKA ARTS THEATRE

小学校で「能楽ワークショップ」、「歌で元気をもらおう」
アーティスト派遣事業報告

 横須賀芸術劇場では2015年から、アーティストを市内の学校へ派遣し、生徒の皆さんに音楽や伝統芸能を気軽に楽しんでいただくプログラムを提供しています。
毎年継続してきた結果、これまでに小学校と養護学校の延べ31校を訪問、横須賀に住む計5800人を超える生徒の皆さんがコンサートやワークショップを体験しました。

 今年も計5校の学校を訪れる予定でしたが、コロナ禍の状況を鑑み、学校側との協議のうえで規模を縮小し、去る9月にソプラノ歌手と能楽師が4つの小学校を訪れました。


能楽師の観世喜正さん(中央)

 小学校2校で能楽ワークショップを担当してくださったのは、当劇場の「よこすか能」シリーズをプロデュースする観世流シテ方の観世喜正さん(かんぜ・よしまさ/写真中央)。

 生徒の皆さんは、事前に配られたテキストをもとに、能舞台の仕組みやたくさん種類のある能面など、能楽の歴史やそのスタイルについて、写真や動画も見ながらレクチャーを受けたあとに、能でも使われる独特の歩き方「すり足」も体験しました。
喜正先生が「腰を落として、“スッスッ”と」とアドバイスしながら動いてみると、子どもたちなりにコツを掴んで上手になります。

 従来は、伝統芸能である能の特徴のひとつでもある「謡」のコツを実践しながら教えていただいていますが、今年は内容を少し変更して、生徒たちと距離を取った喜正先生のお手本を聴いたあと、生徒たちがマスクを着用したまま朗読にチャレンジしました。
喜正先生の独特の発声が体育館に響き渡ると、生徒たちは目を丸くしていました。

喜正先生に続いてすり足にチャレンジ。
右手は扇を持っているイメージで


 後日頂いた子どもたちからの感想では、「最初は「般若」という鬼のような仮面(※能面)が怖いと思っていたけれど、観世さんが「悲しい顔」にも見えると言っていてすごいと思いました。」という声もあり、短いながら、能のエッセンスを体験していただくことができました。


中川郁文さん(ソプラノ)、篠宮久徳さん(ピアノ)

 続いては、来年当劇場のフレッシュ・アーティスツ from ヨコスカシリーズへの出演が決まっている中川郁文(なかがわ・いくみ)さんです(ピアノは篠宮久徳さん)。
「歌で元気をもらおう 中川郁文ソプラノ・コンサート」と題して、小学校2校を訪問しました。

 感染症対策のため、体育館に集まる人数を減らし、普段の授業で集まっている人数に留めるほか、当日は一人一人のソーシャルディスタンスを取って座っていただきました(写真上)。
中川さん自身も生徒と距離を取り、ステージの上からミュージカル「マイ・フェア・レディ」から「踊り明かそう」、オペラ「ファウスト」から「宝石の歌」などを披露しました。

 途中には中川さんへの質問コーナーも。事前に生徒から募集した中から抜粋で取り上げ、「人前で歌うのに緊張しないんですか」「小学生の時の夢はなんですか」など素朴な疑問にも答えていただきました。(中川さんは小学生の時は学校の先生になりたかったそうで、実際に教師免許も持っていらっしゃいます!)

コンサートを終えた後の中川さんと篠宮さん、校庭にて

 生徒たちの感想には「想像しながら聴いていると、こんな感じとか色々な場面が思い浮かびました」など素直な感想が綴られていました。
学校の先生からは「コンサートの日は廊下ですれ違うたびに“(コンサート)すごかったね”」と声をかけられるほどでした」と嬉しいお声も頂きました。


 未来を担う子どもたちとアーティストを繋ぐ“学校訪問コンサート”。
今年は安全面に最大限考慮した形での開催となりましたが、劇場の大事な役目のひとつとして、これからも継続していきたいと思います。


中川郁文さん・篠宮久徳さんが出演するコンサート 詳細はこちらをご覧ください。

フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ シリーズ58
中川郁文ソプラノ・リサイタル

2021年 2月28日 (日) 14:00開演 (13:15開場)
ヨコスカ・ベイサイド・ポケット
全席自由:2,000円
曲目:
ヘンデル オンブラ・マイ・フ
プッチーニ 歌劇「トゥーランドット」 より “お聞きください、ご主人様”、“氷のような姫君の心も“ ほか

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