<公演に寄せて>
女方舞踊の『近江のお兼』、黙阿弥の世話物の代表的な『御所五郎蔵』そして、曾祖父六代目菊五郎がつくり、十七代目の勘三郎のおじさまが復活してくださいました『高坏』を初役で勤めさせていただきます。どれも代表的で、華やかで、わかりやすい演目が並んでおりますので、みなさんにとても楽しんでいただけると思います。ぜひお越しいただけたらと思っております。
<見どころ~近江のお兼>
お兼は、漁師相手に立ち廻ったりと大力の持ち主です。他方で、近江の地を折り込んだ切ない女心や盆踊唄を踊ったりと田舎娘らしい純朴さも表現します。明朗で、華やかな曲調と娘心を描くクドキ、長い布晒を使っての力強くもたおやかな踊りをご覧ください。
<見どころ~御所五郎蔵>
五代目菊五郎が大事にしていた演目で、以前こんぴら歌舞伎で初めて演じたとき、黙阿弥の七五調の台詞が洗練されていて、星影土右衛門と五郎蔵そして子分たちの掛け合いの面白さというものを感じました。そして、「縁切り」というものもございます。逢州殺しでのだんまりや立廻りも歌舞伎美に溢れた場面でございます。歌舞伎の代表的な場面、極まっている場面をどういう風に美しく見せるか、そして先輩たちが築きあげてきてくださったものをいかに継承し、黙阿弥の魅力を伝えることができるかを難しさと同時に楽しみに感じて勤めさせていただきます。
<見どころ~高坏~>
六代目菊五郎が作ったものを十七代目の勘三郎のおじさまが復活されて、作曲し直し、それが、歌舞伎の中で人気演目となりましたので、十七代目の勘三郎のおじさま、十八代目の勘三郎のお兄さん、そして現代に流れている『高坏』の流れに私ものりたいと思います。またアメリカのタップダンスが六代目のアンテナに引っかかり、当時の宝塚の方に歌詞を書いていただいて一緒につくったということは本当に創作の中でもタップダンスを取り入れるというのは、自分の祖先ながらすごい人だなと思ってしまうところがあります。
タップダンスとは言いつつも、狂言の持つふんわりした雰囲気や桜羽目のなかでお酒を飲んで浮かれながらタップを踏んでいくというところが難しさでもあるし、面白さでもあると思いますので、ほろよい気分で踊ることに慣れるまで稽古をして臨みたいと思います。